人財活用03-使命と目的は似てるけど違うのか

■使命と目的とは

組織にとっての「使命、目的、目標」を定義する。
人財活用だけでなく企業理念の話になる。

《使命》
外部の期待に応え、組織活動の結果として作り上げる成果物または到達する状態。
例:「良質な映像作品を供給し続けること」(A社)
「心地よい住環境の提供」(B社)

《目的》
事業等の一連の活動が最終的に目指す対象としての、作り上げる成果物または到達する状態。
例:「映像文化の革新」(A社)
「心地よい住環境の提供」(B社)

《目標》
目的に向かう活動の途中で目指すための、目的への到達度を示す具体的な指標。
例:「今期目標、売上100億円」

《目標》は参考のために記した。本稿では触れない。
「例」はどれも架空のもの。

■組織を代表する使命と目的

使命は《外部の期待に応える》ことが要件であり、目的はそうではない。
それでは使命と目的は違うものかというと、ほとんど違わない。

《目的》は個々の組織によって違うのは当然だが、根源的には「社会に価値を提供することで自己も利得を得る」ことだ。(通念上、完全に合意された見解ではなく、諸説がありうる。)

一方で《使命》の定義の中の「外部」は多層構造をなしており、「上部組織(例:親会社)」ということもある。だがそのさらに上部をたどっていくとやがて「外部=社会」に行きつく。

目的も使命も、ともに《社会への価値提供》という本質は変わらない。だからひとつの組織が自己のために設定した目的と使命が、まったく同じでもかまわない。定義のところであげたB社の例がそれにあたる。

A社のように価値観的な階層の上下で分けることもある。この場合、使命と目的を逆にしてもあまり矛盾はない。両者を厳密に分けることに意味はない。

■組織内部での使命と目的

個人の場合は分けて考えたほうがいい。
さっきのA社の例を見てほしい。ひとりの社員の使命が「効率的で機動的な映像原作ライセンスの取得」といった場合もありうる。使命は小分けして配賦することができるのだ。

使命は上位職から下位職に連鎖する。「下位職における《使命》は上位職における《達成手段》」という言い方もできる。

世間ではよく「下位職の《目的》は上位職の《手段》」という言い方をするが、それは以下の理由で、やめたほうがいい。

■目的は共有する

組織は目的を共有する集団だ。だから経営者も管理職も下位職も同じ目的を持つべきだ。下位職の個人としては小さな使命を担っていても、同時に組織全体の目的を認識していれば、ベクトルにゆらぎがない。大局を見据え、一丸となって行動できる。

別の定義を与えれば、別の結論になるだろう。だが意識のよりどころとして「組織内の立場によって変わるもの」「変わらないもの」が両立するという状況は、どこへ行っても同じかもしれない。

■まとめ

・《使命》は外部の期待に応えて出す結果。
・《目的》は組織が最終的に目指すもの。
・組織を代表する《使命》《目的》に本質的な違いはない。
・組織内で、使命は小分けして配賦できる。
・組織内で目的はひとつ。上位職下位職が共有する。

次回は人財活用の話に戻って、使命をどうハンドリングするか。

(あもうりんぺい)

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