人はなぜ集うのか2-対人志向のタイプ分け

■対人志向の円環をながめておく

円環の構造をさらに確認しよう。組織での活かし方を効果的に検討する手前で。
前回で述べた12種の対人志向の定義づけも参照してから見てほしい。

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対人志向の円環 領域ごとの属性

◆領域ごとに色がある

円環で上側の領域10~2<共感、寛容、友愛、奉仕、共創>は共同的で調和的な価値を追求している。下側4~8<闘争、嗜虐、略奪、利得、承認欲>は利己的・排他的な価値追求だ。

上下の中間領域にある<3.共闘>と<9.依存>には、上下にまたがる属性がある。<共闘>は同じ集団内では強固に共同的だが、共通の「敵」に向けて排他的だ。<依存>は集団に対して強く調和しようとするが、共通利益への志向と能動性が薄く、孤立した利己心を併せ持つ。

また中心線を含む右側の領域0~6<友愛、奉仕、共創、共闘、闘争、嗜虐、略奪>は価値追求の途中でなんらかの能動を伴うことが基本だ。対応して左側7~11<利得、承認欲、依存、共感、寛容>は受け身的になるか、または自分が行動した結果が相手に届き、その反応が返ってくるのを待つという性質がある。

左から上方にかけての9~11<依存、共感、寛容>は女性の中で比重が高い。右から下方にかけての3~5<共闘、闘争、嗜虐>は男性に色濃い。(平均的な傾向性をいうのであり、性差固定を意図していない。)

◆対極の位置にあるものは対照的

円環上で中心を挟んで点対称の位置にあるふたつの要素は、なんらかの対照性を持つ。たとえば:

<0.友愛>と<6.略奪>は、前者が無差別な愛情、後者は破壊的な欲得を特徴として、それぞれ円環の極北と極南の位置を占める。

<5.嗜虐>が相手の尊厳を崩しても意を介さず、むしろそのことに意欲を燃やすのに対し、<11.寛容>は自身への被害さえも受容し相手を尊重する。

◆隣り同士は似ている

隣り合った要素には近縁性があり、順にたどることですこしずつ性質が遷移する。いくつか例を挙げると:

<2.共創>と<3.共闘>は、ともに複数の者が一緒に価値追求をする。けれども<共創>が創造的な価値を対象にするのに対して、<共闘>は外部に敵を作って攻撃の要素が加わる。

<4.闘争>では相手を屈服させて自分の値打ちを確認するが、<5.嗜虐>になると、それに加えて相手を傷つけることが快感につながっていく。

<9.依存>は受け身の姿勢で集団と同化しようとする。それに対し<10.共感>ではそこから抜け出し、積極的な精神の交流で互いの存在を肯定するようになる。

このように、ひとつの起点から円環を順にたどり、ひとめぐりすると元の要素に戻る。

■どの志向が強いかでタイプ分けできる

一人の人は、対人志向として円環の12要素のひとつではなく複数、または全部を持っている。状況によっていろいろな志向が浮き出てきたり隠れたりするわけだ。

とはいえ、人によって特徴的な要素というものがある。ある人はだいたい共創的な姿勢だったり、別の人はいつも承認(業績や人格をほめること)を求めていたり、といったように。

この姿勢の違いは対人関係の場にとどまらない。≪なぜ生きるのか≫≪なぜ働くのか≫といった究極的な価値観や行動律の違いを背景に置いている。それは別に議論し、ここでは対人志向に限った話をする。

円環の12要素のうちどの志向が強いかによって、人を12のタイプに分けることができる。ただこれは生涯変わらないものでもなく、傾向がすこし強いか弱いかの相対的な判断だ。決めつけにならないように注意しておこう。

■組み合わせのやっかい

上のことをふまえておきながら、タイプ別の組み合わせの悲喜劇をいくつか見ていく。

◆奉仕タイプと利得タイプ ~ウマが合うが破局の芽も

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<1.奉仕>タイプは、ニーズを感知して相手に与えるのが得意だ。与えるものは、心づかい、精神的支援、労力や金品まで含む。物質的な見返りは必ずしも求めず、「喜ぶ顔が見たい」「感謝の声を聞きたい」といった志向が強いのがこのタイプの平均像だ。

<7.利得>タイプは与えられるものを享受し、また上手に与えられるように画策する。周囲から最大限の支援を引き出すために、ニーズをアピールしたり憐憫の情に訴えたりする。たとえ表面的にせよ感謝や喜びを口にしてうまく立ち回る者もこのタイプにはいる。一方でそこまで世知にたけていない者は、与えられる一方で済ませてしまう。

両者は対人志向の円環上では対極位置の関係だ。奉仕タイプがつぎつぎと支援を繰り出すと、利得タイプは貪欲に享受する。この関係は案外、長続きすることがある。しかし、あまりに見返りが少なく片務的な関係になっているときは別だ。奉仕タイプが、相手の表面だけの感謝から不実さを感知したときなど、破局の芽はそこかしこにある。

★組み合わせの悲喜劇で多くの文学作品が読み解けるほど、対人志向のずれは人生への影響が大きい。この項、次回に続く。

(あもうりんぺい)

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