ハイタッチは爽快だ。ノリとタイミング。相手とぴったり合った呼吸。働いている人がみんな《仕事》にハイタッチできると、それだけで組織は明るい。だが空振りのハイタッチは寂しい。そうなっていないか。
以下の状態にある組織も目につく。
・組織の要求する能力と、個人の持つ能力がマッチしていない。
・マッチしているかどうかもわかっていない。
・その前提として、スキルの可視化ができていない。
もしこの状態を認識できれば、それは大きなチャンスになる。まずはマッチングの状況を可視化してみよう。ここではOPスキルマトリクス(Organization-Personnel Skill Matrix)と名づけたツールを使う。
■1人の個人と組織のマッチング
表は「新規事業会社Xの立ち上げと運営」というプロジェクトを例にしている。プロジェクトごとにスキルの明細は大幅に違う。例はすこし簡略化している。実際はさらに詳細化し、かつプロジェクトの使命に特化した具体的なスキル項目を設定することが望ましい。
表(1)は組織の1個人(”b”という個人IDを持つ)と、組織要求スキルとの対応を示す。上側が組織の使命に即した要求スキル。下側が個人の保有スキルと将来取得を希望するスキルである。
保有スキルは、ここでは0(無記入)〜5の6段階としている。この数値は管理者による考課や自己採点等をあてる。前回「能力を探す旅」で触れたように、表面的な認識にとどめず、深く採掘するほど精度が高まる。
スキルの種類をⅠ〜Ⅷで表す。
そのうちⅠ〜Ⅴが現在(例では事業立ち上げ時)要求されるスキル。Ⅳ〜Ⅷが将来(例では事業運営時)要求されるスキル。ⅣとⅤが両者で重複しているという想定である。
これによってマッチング状況をあぶり出し、さらに本人希望や周辺の事情を勘案したうえで、現在と将来への個人への使命配賦の最適化を図る。
■集団と組織のマッチング
表(2)は表(1)を集計してチーム全体を記載したもの。縦軸に個人(”a”〜”f”というIDを持つ)を配列している。横軸は表(1)と同じである。主に各個人と使命との間をとりもって、最適な配賦を図るために使う。
個人ごとに、現在保有スキルと将来希望スキルを足し算して「総合スコア」を出す。これによって個人ごとにスキルの軸足がどこにあるかを確認し、将来像を把握する。個人の育成などに活かしていく。
■OPスキルマトリクスの効果
OPスキルマトリクスは、さまざまな手がかりを与えてくれる。
・最適な使命配賦の物差しにする。
・使命に適した個人がいることを見過ごしてしまうことを防ぐ。
(→この効果は案外大きい)
・組織として手薄なスキルをあぶり出し、育成計画等につなぐ。
・マッチングによって従業者個人の満足度を上げる。
ただしこのメソッドは補助手段に過ぎない。データを頭に入れて、管理者が判断することに変わりはない。ただその過程の一部を可視化し、思考の便宜を図っただけのものだ。
くれぐれも、計算値を機械的にあてはめて最終判断を出してしまうようなことは避け、管理者の知恵を注ぎこみたい。働く人が気持ちよく仕事にハイタッチできるように。
(あもうりんぺい)